デジタルで「フィルムライク」を目指して追い込んでいるのにどこか「写りすぎている」「出来すぎている」
そんな違和感に悩まされた経験はないでしょうか。
フィルム高揚の陰で価格高騰や廃盤が続き、日常的にフィルムで撮り続けるハードルは確実に上がりました。だからこそ、デジタルで撮ったデータをRaw現像でフィルムの質感に近づけようとする流れは自然なことです。
しかし、完璧にパラメーターを整え、ハイライトを抑え、粒状感をのせても、残る「精緻すぎるデジタル感」

デジタルに欠けている「不完全さ(物足りなさ)」を探しているはずなのに、いざ意図してその「物足りなさ」を作ろうとすると、驚くほど難しいことに気づきます。
なぜRaw現像で「物足りなさ」を表現するのは難しいのか。そして、そのジレンマから脱却するにはどうすればいいのかをお伝えします。
デジタルの解像力と再現性が邪魔をする
現代のデジタルカメラとレンズは、あまりにも優秀です。明暗差を滑らかに捉え、隅々までシャープに描き出します。一方、フィルムの魅力は「捉えきれなかった階調」や「曖昧なディテール」といった不完全さにあります。
引き算の表現をしようとしても、デジタルの正確すぎるベースデータが引き戻してしまうため、意図的な「物足りなさ」を作ろうとすると、どうしても「狙った感」が出てしまうのです。

実践:本能の逆をいく現像ワークフロー(FUJIFILM)
完璧さを崩し、フィルム特有の「隙」を作るには、自分のコントロールや「正解の現像」を目指す本能から一度離れる必要があります。
今回はFUJIFILM X-Pro3で撮影した1枚の写真を例に、実際のRAW現像ステップを解説します。
STEP 1:未現像(RAWデータ)

まずは撮って出しのRAWデータ。デジタルらしい解像感とフラットな発色です。
STEP 2:クラシッククロームを適用 & シャープを「0」に

FUJIFILMのベースとして優れているフィルムシミュレーション「クラシッククローム」を選択。
さらに、デジタル特有のチリチリとした解像感を消すためにシャープを「0」まで落とします。

STEP 3:粒子を少しだけ加える

ノイズではなく、あくまで自然な質感を足すイメージでグレインエフェクト(粒子)を入れます。
ここでやり過ぎると「わざとらしい写真」になるため、隠し味程度に抑えるのがポイントです。
STEP 4:トーンカーブのシャドウ側を浮かせる

トーンカーブの左下(黒レベル)を少し上に引き上げます。
黒を締め切らずに浮かせることで、フィルムのベース紙のような眠い質感と黒潰れしない余白を作ります。
STEP 5:ヒストグラムを見ながら色かぶり補正を調整(本能の逆へ)

ここが最大のポイントです。今回の写真には緑が多く写っており、元々少し緑かぶりをしていました。
普通の現像であれば、マゼンタ側に振って緑みを消そうとします。
しかし、ここではあえてさらに「-4」緑側に振ってみます。
完成:自分の思惑を裏切ることで生まれる「フィルム感」
正解の色に戻すのではなく、あえて色を破綻させる。
ヒストグラムや自分の「綺麗にしたい」という本能の逆をいくことで、デジタル特有の計算された仕上がりから脱却し、予測できないフィルムらしいニュアンスが立ち現れます。
迷いをなくすツールという選択肢

一つひとつのパラメーターを微調整して「物足りなさ」を作る作業は、時に果てしない試行錯誤になります。どうしても自分の癖や計算が出てしまうという方は、完成されたベースプリセットを活用するのも一つの手です。
手軽に自然なフィルムの質感や、計算された「隙」を表現したい方に向けて、「無限フィルムプリセット」をnoteにて公開しています。
デジタルの「出来すぎ感」から抜け出し、フィルム特有の質感やエモさを表現したい方は、ぜひチェックしてみてください。
[無限フィルムプリセットの詳細・ダウンロードはこちら]
※FUJIFILMユーザー限定プリセットです。

コメント